大人のぽりぽりクラブ

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編集部おすすめ日本人はパリパリ、ポリポリが大好き? オノマトペで紐解くおせんべいの食感の魅力

マイちゃん

マイちゃん

おせんべいを美味しく食べるときの音、皆様はどのように表現しますか?
ガンさん

ガンさん

やっぱり、バリバリとかボリボリとか……。食感の軽いおせんべいなら、サクサクやカリカリもあるね。
マイちゃん

マイちゃん

聞いているだけでちょっと楽しくなるような音の響きですよね。このように物の状態を音(擬音)で表現しているものをオノマトペっていうんです。日本語にはこのオノマトペがとっても多いそうですよ。そしてこれは、私たちが美味しさを感じることに大きく関係しているんです。
ガンさん

ガンさん

へえ、音が美味しさに関係するんだ。面白いね。
マイちゃん

マイちゃん

そうなんです。そこで「大人のぽりぽりクラブ」では、オノマトペと美味しさ、そしておせんべいとの関係を、和文化研究家の三浦康子先生と考えてみることにしました。

食べることに関するオノマトペ。一体いくつぐらいあるの?

三浦先生

三浦先生

まずは食べることに関するオノマトペについて、辞書で調べてみましょうか。『日本語オノマトペ辞典』(編/著 小野正弘・小学館)には、「食べる・噛む・舐める」に関するオノマトペは、73種掲載されていました。一例を挙げてみましょう。

食のオノマトペの例

あんぐり・がしがし・がつがつ・がっぷり・がぶっ・がぶり・かりかり・がりがり・かりっ・くちゃくちゃ・ぐちゃぐちゃ・こしこし・こりこり・こりっ・ごりっ・さくっ・さくさく・さぶさぶ・しこしこ・しこっ・しゃきしゃき・じゅるっ・しょりしょり・じょりじょり・ずるずる・つるつる・ぱくっ……
三浦先生

三浦先生

このような擬音が続きます。
この辞書は2007年に発行されたものなので、最近わりとよく使われている「もちもち」や「もっちり」「ぷりぷり」といったオノマトペは収録されていませんでした。一方で今はそれほど耳にしない「さぶさぶ」といった表現が入っているのは興味深いです。
私が数えたところ、「食べる・噛む・舐める」の項に載っている73のオノマトペのうち、歯ごたえに関する表現は38ありました。
かりかり・かりっ・こりこり・ごりっ・ぱりぱり・ぼりぼり…などですね。

「パリパリ」「ボリボリ」が幸せな音である理由

マイちゃん

マイちゃん

食べるときに食べ物が歯に当たる感覚が表現されることが多いのですね。
三浦先生

三浦先生

これは日本人がものを食べるときには「歯」が重要な役割を果たしていることを、無意識に感じているからではないでしょうか。
年齢の「齢」という字には「歯」が入っています。健康な歯があってこそ、人は豊かに年を重ねられ、生きていくことができるんですね。歯ごたえや歯ざわりをちゃんと感じられることは、生きていくためにはとても大切なことなんです。だからこそ、それを感じさせてくれるものを「美味しい」と感じ、言葉でも表現するようになっていったのかもしれません。丈夫な歯で噛むことは人の喜びなんですね。
マイちゃん

マイちゃん

おせんべいを食べるときのオノマトペは、「パリパリ」「バリバリ」「ポリポリ」「ボリボリ」「サクッ」などです。どれも小気味よい音ですよね。
三浦先生

三浦先生

そのような気持ちのいい音を当てることで、食べる喜び、すなわち生につながる喜びを感じているのかもしれませんね。

食のオノマトペの規則性

厳密なルールはなく、個人の感性が自由に反映されるオノマトペですが、並べてみてみるとそこには規則性があることがわかります。

ガリガリ・ゴリゴリ・バリバリ・ボリボリ……
これらは比較的硬いものを食べている、しかもしっかり咀嚼するときに使われる音ではないでしょうか。

一方で
カリカリ・コリコリ・パリパリ・ポリポリ……
こちらは決して柔らかいものではないのですが、強度としては弱く、軽い食感で簡単に噛み砕けるものを表現するときに使われます。

似たような文字を使っても「ガ」や「バ」などの濁音が入ると強度は強くなることがわかります。

また、1回の噛み応えは、
カリッ・ガリッ・パリッ・ポリッなどのように表現されますが、
連続して嚙み砕く様子は、
ガリガリ・バリバリ・ポリポリのように音が繰り返して表現されます。

オノマトペは自由ではあるのですが、言葉は物事を他人に伝えるための道具ですから、一定の規則性に基づいて使われているのです。

食感を楽しむ、日本のおやつ

マイちゃん

マイちゃん

オノマトペを軸にして考えてみると、日本のおやつにはある特徴があることがわかりました。硬いものが少なくないんです。もちろんお饅頭のような柔らかいものもありますが、おせんべいやおかき、おこしやかりんとうなどは硬いですよね。西洋のおやつには「サクッ」や「パリパリ」としたものはありますが、「バリバリ」「ボリボリ」といったものはあまりないように思います。
三浦先生

三浦先生

やっぱり日本のおやつに比べて、西洋のおやつは柔らかいものが多いと思いますよ。クッキーを見てもソフトタイプが多く、サクサクよりもしっとりとした食感が好まれているのかもしれません。
日本でこれだけ歯ごたえのあるおやつが普及したのは、ひとつには甘い物が貴重だった時代に、食感で食べる楽しみを作り出していたからかもしれません。
先程も説明した通り、日本人にとって噛むことは喜びでした。だから、おやつという娯楽性を兼ねた食べ物を食べるときには、食感が楽しめるものを用意したのではないでしょうか。味のバリエーションが作れないかわりに、多様な食感で食べる楽しみを広げ、エネルギーを得るようにしたのかもしれませんね。

オノマトペでもっとおやつが美味しくなる?

日本人はパリパリ、ポリポリが大好き? オノマトペで紐解くおせんべいの食感の魅力

マイちゃん

マイちゃん

日本のおやつは食感に特徴があるのだとすると、オノマトペを使えばおやつの時間がもっと楽しくなるかもしれませんね。
三浦先生

三浦先生

そうですね。例えば食レポが上手な人を見ていると、オノマトペの使い方が巧みだと感じます。「カリッとした歯ごたえがたまりません」とか「お口のなかでほろほろとほどけて」とか「ぷりぷりの食感が」といった表現をされていますよね。
そのように言語化すると、食べているものへの関心が高まり、より一層美味しさが増すのだと思います。
相手がいるときはもちろん、一人でおやつを食べるときにもどのような食感なのかをオノマトペで表現しながら味わってみると、さらに美味しさを感じられるかもしれませんよ。
マイちゃん

マイちゃん

岩塚製菓には「ふわっと」というお米のスナックがあるのですが、これはお口のなかで「ふわっと」溶けていく様子が商品名になっているんです。でも最初の歯ざわりは「サクッ」だし、喉越しは「とろり」です。「サクッ、ふわっ、とろり」が次々とお口の中で展開されるのが楽しく美味しい商品なんですが、これって皆様に伝わっていますかね……?
三浦先生

三浦先生

どうでしょう。ファンの皆様と一緒に考えてみたら面白いかもしれませんよ。他の商品でも、食べてみてどんなオノマトペが生まれるかを実験してみたらいいと思います。そのときにはちょっと古い辞書をひいて、昔はよく使われていたオノマトペなども使用してみると、新しい発見があるかもしれません。

マイちゃん

マイちゃん

うわぁ面白そう!いいですね!やってみたいなぁ。大人のぽりぽりクラブの皆様、ぜひ一緒にオノマトペで遊びましょう!
三浦先生、ありがとうございました。

協力:三浦康子

三浦康子

三浦康子

和文化研究家
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとっている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『おうち歳時記』(朝日新聞出版)ほか多数。