気になる健康美味しく噛んでいつまでも健康に! 栄養学の専門家がおせんべいをおすすめする理由
マイちゃん
- みなさんは、フレイルという言葉を聞いたことがありますか? フレイルとは、歩いたり食べたりするための機能や意欲が低下し全身が虚弱状態に陥ってしまうこと。フレイルが進行すると日々の活動に支障をきたしたり、認知機能が低下したりすることがあります。
しかしフレイルは日々の心がけである程度の予防が可能です。その秘訣の一つはなんとおせんべい! なぜおせんべいがフレイル予防になるのか、大妻女子大学 家政学部 食物学科 管理栄養士専攻の川口美喜子教授に教えてもらいました!
加齢によってフレイルが起きるのは自然なこと
マイちゃん
- まずは改めてフレイルについて教えてください。フレイルは誰にでも起こりうるのですか?
川口先生
はい。フレイルとは全身の虚弱状態を意味する言葉です。人間誰しも加齢によって身体や精神の機能が衰えていくことは自然なこと。身体の機能は、一般的には30代をピークに低下していくと言われています。
しかし、その後の健康状態をどの段階で保てるかは個人差があります。元気に動き回れる自立した生活を送れるのか、要介護状態まで弱ってしまうのかは人によって異なるのです。
フレイルとは、健康であるとは言い難いものの要介護状態ではありません。いわばその中間地点です。この状態であれば、地域や専門家と連携した少しの努力で健康状態にもっていくことが可能です。
ですから、現在健康状態が良好な人はそれを保つ努力を、フレイルにある人は少し頑張って健康を取り戻す努力をなさると良いでしょう。
フレイルは悪循環を引き起こしやすい
川口先生
しかし一旦フレイルに陥ると、悪循環が起こりやすくなります。
身体が衰えるために疲れやすくなり、活動量が少なくなります。するとさらに筋力が弱まり、ますます疲れやすくなる。さらには自由に活動できないことから寂しさを感じるようになり心理的にも弱くなっていきます。心が弱るとますます活動量が落ち身体を動かすことが億劫になる……。やがては食べられない、動けない、認知機能も低下するという状態になっていきます。
さらに、外に出ることができなくなると自宅にこもりがちになり社会的フレイルになることがあります。周囲から孤立すると精神的に追い詰められ、ときには鬱を発症してしまうこともあるのです。
マイちゃん
- なるほど、フレイルは身体にだけ影響があるわけではないのですね。
オーラルフレイル(口腔機能の虚弱)が全身のフレイルにつながる
マイちゃん
- オーラルフレイルという言葉を聞いたことがあります。これはどのようなフレイルなのでしょう。
川口先生
はい、これは口腔機能のフレイルを指します。高齢になると唾液が分泌されにくくなり、しっかり噛んで食べることが億劫になります。また舌の圧力が低下するため口の中でもぐもぐと食べ物を動かしたり飲み込んだりする力が弱くなります。歯が少なくなったり歯槽膿漏が起きたりすると、噛むことを苦痛に感じることもあるでしょう。するとどうしても柔らかいものばかりを好んで食べるようになります。それがフレイルにつながるのです。
よく噛まないと口腔機能はますます低下し、より食べ物が食べづらくなります。食欲が低下すればそれは全身の虚弱につながりますし、口を動かすことが億劫になれば話すことも面倒になっていきます。話すことをしなくなれば、それは心理的・社会的フレイルにもつながっていくのです。
マイちゃん
- オーラルフレイルは全身のフレイルにつながっているのですね。
川口先生
そうなんです。フレイルになる原因は一つではありませんが、その2つには深い関係があります。逆に考えれば、オーラルフレイルを予防することはフレイルの予防にもなるんですよ。
オーラルフレイル予防のためには、歯科検診を受けること、口の中をトレーニングすること
マイちゃん
- オーラルフレイルを予防するためには、どんなことをするといいのでしょうか。
川口先生
第一には自分の歯を健康に保つこと。入れ歯にするとどうしても味覚が落ちて食べる楽しみが減ってしまうのでフレイルが起きやすくなります。そのためには口の中を清潔し、痛みがないか異常がないかをよく観察することが大切です。歯科医のところへ行き定期検診もきちんと受けましょう。
それから口の中をトレーニングすることです。私のおすすめはカラオケ。しっかり声を出し口を動かすことが良い刺激になります※。
よく噛んで食べる必要のある食品を取り入れていくこともトレーニングになります。食事にはたくあん、おやつにはおせんべいなどを取り入れると自然と舌や顎が鍛えられ、オーラルフレイルを予防することができます。
唾液の分泌を増やすためには、旨味成分を含むものや酸味の効いたものを食べると良いでしょう。とくに昆布の旨味成分であるグルタミン酸は唾液の分泌に大きく関与します。おやつにもダシ仕立てのものを選ぶのは良いことですね。
※カラオケ店を利用する際は、新型コロナウイルス感染拡大防止に努めましょう。
おやつタイムはお茶と一緒に
川口先生
おせんべいをおすすめするのには、よく噛まなくてはならないということのほかにもう一つ理由があるのです。
それはお茶との相性がぴったりなこと。シニアのみなさんは水分を摂ることを忘れ脱水症に陥りがちです。そこでおやつタイムにはおせんべいと一緒にお茶を飲んでいただければ、オーラルフレイルと同時に危険な脱水症を予防することができます。
川口先生おすすめのおせんべい4選
マイちゃん
- では先生、数あるおせんべいのなかでもフレイル予防のためにぜひおすすめしたい商品はありますか?
川口先生
はい、私がおすすめするのは「岩塚の黒豆せんべい」「田舎のおかき」「きなこ餅」「がんばれ!野菜家族」の4種です。それぞれの理由を紹介しますね。
黒豆せんべい
かた焼きせんべいであるためしっかり噛んで食べることができます。タンパク質を豊富に含む黒豆が入っているので、栄養補給もばっちり。シニアは繊維の多い肉類や調理に手間のかかる魚を避けがちなのでたんぱく質が不足しがちです。1枚あたり2.2gもタンパク質が摂れる「岩塚の黒豆せんべい」は栄養価的には大変魅力的なアイテムです。
田舎のおかき
塩味が好きな方には「田舎のおかき 塩味」を食べてみてください。国産米を使ったおかきの生地そのものが美味しいため一般的な塩せんべいよりも塩分が少なく、安心して食べられます。だしの入った「田舎のおかき だし仕立て」もおすすめ。
きなこ餅
食欲が落ちている人であっても、その人にとって懐かしい味わいであれば手が伸びることがあります。シニアにとって、きなこはそのうちの一つであるはず。まずは美味しいと感じられるものを食べ、食べる喜びを思い出せれば人は健康に近づいていくことができます。ほんのり甘くて香ばしい「きなこ餅」にはいつまでの自分の口で美味しく食べたい!と思えるような美味しさがあります。
※嚥下機能が低下している方はきなこで咽ないようご注意ください。
がんばれ!野菜家族
食事は楽しく食べることも大切です。赤ちゃんも食べられる「がんばれ!野菜家族」なら家族みんなで楽しむことができますよね。暖かい部屋のなかでお茶を飲みながら語り合うひとときが、身体だけでなく心も健康へと導いてくれます。
コロナ禍にあって孫にはなかなか会えないシニアの方も同じものを食べていると思うと元気が出るはずですよ。
マイちゃん
- 先生、ありがとうございました。さっそく祖父母に歯の定期検診やおせんべいを食べることを勧めてみようと思います。
川口先生
そうですね。でもフレイルに気をつけなければならないのは高齢者だけではないんですよ。全身の筋力は40代から衰え始めます。意識的にトレーニングをしないと30代からは筋力が落ちますし、私が教えている大学ではすでに筋力が低下し始めている学生がいます。
フレイル予防をはじめるのに早すぎるということはありません。気づいたときから意識的に取り組んでいってください。
取材協力
川口美喜子
大妻女子大学 家政学部 教授
大妻女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業、管理栄養士取得したのち、島根大学医学部で博士(医学)学位を取得。専門はがん栄養、食育、スポーツ栄養、高齢栄養。
管理栄養士の卒後教育、在宅介護における食事の指導、新宿区の子どもたちを対象とした「食とスポーツ」の支援、千代田区在住者・就労者のための妊活食支援などを精力的に行う。
著書に『がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ』(医学書院)、『いっしょに食べよう フレイルを予防し、老後を元気に暮らすためのらくらくメニュー』(木星社)などがある。