大人のぽりぽりクラブ

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気になる健康おせんべいをボリボリと食べることが、人生を豊かにする!? 実はすごい「食感」の話

マイちゃん

マイちゃん

バリバリ、ボリボリ、ムシャムシャ……
ガンさん

ガンさん

お、今日も美味しそうにおせんべいを食べてるね!
マイちゃん

マイちゃん

だってガンさん、おせんべいを食べなきゃ損ですよ。おせんべいをバリバリ食べることは人生を豊かにするんですって。
ガンさん

ガンさん

確かに美味しいおせんべいを食べている時間は幸せだからそういう考え方は理解できなくもないけど、なんだか突飛な感じがするねぇ。一体どうしたの。
マイちゃん

マイちゃん

詳しいことはよくわからないんですけど、とにかくバリバリ・ボリボリ食べればいいのかなと思って。ああ良い食感!やっぱりおせんべいは美味しいな。
ガンさん

ガンさん

ははは、マイちゃんは面白いね。なんだか、その「食感」に何か秘密がありそうな気がしてきたよ。詳しい人に話を聞いてみようよ。大妻女子大学家政学部食物学科の川口美喜子先生にお話しをしてもらったよ。

「美味しい」と感じるには「食感」も大事だった!

川口先生

川口先生

日本と同様に食に対して強い関心を持つ人が多いフランスでも、味覚に対する研究が盛んです。そんなフランスで行われた「味覚」に関する調査で面白い結果をみつけました。食品の美味しさは、味や香りだけでなく「テクスチャ」すなわち「食感」も重要だということです。人はこの3つの要素が揃ってはじめて美味しさを感じているよう。どれか一つでも欠けていたら「美味しい」とは感じないようなのです。

マイちゃん

マイちゃん

でも先生、味や香りがないものというのは想像ができますが、食感がないものってないですよね?どんな食品でもそこに物体がある限り食感はあります。
川口先生

川口先生

そのとおりですね。でもすべてのものがゼリー(ゲル)状になっていたらどうでしょう。食品一つひとつの食感の差異は感じられなくなります。そしてこうなると、人は美味しくモノを食べることができなくなるのです。
私は以前、病気のために固形物を食べられなくなった方にゼリー状の食事を用意したことがありました。味も香りもそのまま、見た目もきれいにハンバーグや鮭の塩焼き、野菜の煮物、トマトをゼリー状に成形したものです。しかしその食事は3分の1程度しか食べてもらうことができませんでした。そのときの患者さんの言葉は印象的でした。
「味や香りが違っていても、食感が同じだと違いが感じられない。どうにも美味しくない」
食感の差異を感じられないと美味しさを感じられないというのです。これには驚きました。

ガンさん

ガンさん

たしかに、何もかもがゼリー状であることを考えると食欲は失せていきそうです……。
川口先生

川口先生

この経験を踏まえて、食べ物の嚥下(飲み込み)が困難な方へのメニューでは、すりつぶしたり刻んだりする粒の大きさを変えたりして多彩な食感を楽しめるようにしています。

マイちゃん

マイちゃん

なるほど、「食感」を加えることで「美味しい」と感じられる工夫をしたんですね。

「美味しい」と感じることは生きる力になる

川口先生

川口先生

「美味しい」と感じられることは、実は人が生きるためにはとっても大切なことなんです。病気になって心身が弱ってしまったとき、美味しいものを食べることは楽しみにも支えにもなります。そして美味しく食事を摂れているときは回復もしやすいんです。

ガンさん

ガンさん

生きていくためには美味しいと感じることは重要。だから食感を楽しむことが大切なんですね。
川口先生

川口先生

それだけではないんですよ。食感に関心をもつことができれば、人生の楽しみが一つ増えることになるんです。ものを食べるときに、味や香りだけでなく、歯や舌にどのように当たるのかを感じてみること。するとこれまで眠っていた感性が研ぎ澄まされて新しい世界が開けていきます。これが、食の楽しみを増やし人生を豊かにすることにつながっていきます。
しかしながら、最近では口当たりの軽いもの、口溶けのいいもの、柔らかいもの、歯ざわりのいいものばかりが「美味しい」とされ、それがセールスポイントになっています。よく噛むことが少なくなった現代人は「バリバリ」「ボリボリ」といった音を立てる硬い食べ物にはなかなか遭遇しません。このような食感のあるものを食べる体験も実に面白いものです。そういう意味で、硬い食感のおせんべいを楽しむことは、人生を豊かにすることにつながっているといえるでしょう。

マイちゃん

マイちゃん

いろいろな食感の食べ物を体験することが大切なんですね!

さらにディープな体験をしたければ食感を言語化してみよう

おせんべいをボリボリと食べることが、人生を豊かにする!? 実はすごい「食感」の話

川口先生

川口先生

そういうことです。また、さらにディープな食感体験を楽しみたい方は、感じたことを言語化していくといいですよ。「歯ざわりが軽やか」「奥歯でしっかり噛み締められる」と食レポ風に分析していくのもいいですが、これは一般的にはなかなか難易度が高いです。そこで、日本語に多いという「オノマトペ」を使ってみましょう。
「バリバリしている」「カリカリ、コロコロ、シュワー」など、感じたことを擬音で表してみましょう。食感への意識が一段と高まり、食べることがより楽しくなると思います。

ガンさん

ガンさん

なるほど。毎日食事をするから、その時間が充実することで確かにより人生は豊かになっていきそうですね。
マイちゃん

マイちゃん

おやつの時間も人生の充実度にかかわるようになっていきそうね。これからはもっと食感に注目して、いろいろな食感の食べ物を食べてみます。先生ありがとうございました。

取材協力

川口美喜子

川口美喜子

大妻女子大学 家政学部 教授
大妻女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業、管理栄養士取得したのち、島根大学医学部で博士(医学)学位を取得。専門はがん栄養、食育、スポーツ栄養、高齢栄養。
管理栄養士の卒後教育、在宅介護における食事の指導、新宿区の子どもたちを対象とした「食とスポーツ」の支援、千代田区在住者・就労者のための妊活食支援などを精力的に行う。
著書に『がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ』(医学書院)、『いっしょに食べよう フレイルを予防し、老後を元気に暮らすためのらくらくメニュー』(木星社)などがある。