大人のぽりぽりクラブ

contentsコンテンツ

ほろよい気分でゴクゴクぽりぽりしているときに、
のんびり眺めてください

みなさんに聞いてみました おせんべいを食べるときは斜め上を向いている…?時代小説家の「おやつ」にまつわるエトセトラ

マイちゃん

マイちゃん

累計50万部を突破した「居酒屋ぜんや」シリーズの作者・坂井希久子先生と、2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の主人公である蔦屋重三郎の波瀾万丈人生を描いた歴史長編小説『蔦屋』を手がけた谷津矢車先生は、「大人のぽりぽりクラブ」の公式アンバサダーとして活動いただいています。
今回はこのお二人に、時代小説家とおやつについて語り合っていただきました。
ガンさん

ガンさん

他ではなかなか聞けないエピソードが満載の対談となりましたよ!

おせんべいを食べるときは斜め上を向いている…?時代小説家の「おやつ」にまつわるエトセトラ

執筆中のエネルギーチャージは……

――お二人は日頃、どのようなタイミングでおやつを召し上がっていますか?

坂井先生

坂井先生

私は昼食後に夫と食べることが多いですね。ほっとするひとときです。あとは、執筆中も結構、おせんべいには手を伸ばしています。眠たくなってしまわないよう、食事を控えめにしている影響で、どうしても書いている途中でエネルギー切れを起こしてしまうんですよ。でも集中力は途切れさせたくない。そんなときにおせんべいはちょうどいいんです。
谷津先生

谷津先生

書きながら食べると食べかすが落ちたり、手が汚れたりしませんか?
坂井先生

坂井先生

「大袖振豆もち」や「THEひとつまみ えびカリ」が好きでよく食べていますが、大丈夫です。袋のなかで割ったり、手を拭いたりしながら上手に食べています。
谷津先生

谷津先生

執筆しながらお菓子を食べる人のなかには、箸でポテトチップスを摘んでいるひともいると聞きますが、坂井先生はさすが食べるのがお上手なんですね。 僕もおやつを食べるのは食事の後です。それ以外の時間はできるだけものを食べないようにしているんですよ。虫歯になるのが怖いので。食べたら必ず歯磨きをします。身体が資本の仕事なので、とにかく健康には気を使っています。
坂井先生

坂井先生

えらい!
谷津先生

谷津先生

執筆は午前中にできるだけ集中して、昼には食事とおやつをしっかりとって、午後は筋トレをしてからまた仕事に取り掛かります。夕食までに口にするのはコーヒーぐらいですね。でも「田舎のおかき」は食べることがあります。がりがりとした食感が心地良いんです。特に醤油味と塩味が好きですね。

登場人物におやつを食べさせる2大理由

――小説のなかで、おやつを食べるシーンにはどのような意味を持たせていますか?

坂井先生

坂井先生

登場人物の仲が深まるシーンではおやつを食べさせることがあります。例えば、並んで蒸し饅頭を食べさせることで少し気持ちがほぐれる情景を描き出すことができます。実際に、同じものを食べるとなんとなく人と人との距離が縮まる感覚がありますよね。
谷津先生

谷津先生

食事を分け合うシーンってやっぱり楽しい雰囲気が出ますよね。同じものを分け合うって人間が遥か昔からやってきた基本のコミュニケーションなのかなと思います。 ただ、僕は実はものを美味しく食べさせるシーンを描くのは結構苦手で。登場人物が嫌な思いをしているときに食事を不味く感じているところばかり書いてしまうんですよ。そのときの心情によって、食事の感じ方って変わりますよね。
坂井先生

坂井先生

私はいつどんなときでもご飯だけは美味しいと感じるので、そのように描いています(笑)。
谷津先生

谷津先生

さすがです!
坂井先生

坂井先生

あとはただ喋らせているだけだと間がもたないので、おやつを食べさせることで会話の調子を作ります。
谷津先生

谷津先生

これは小説家がよくとる手法ですよね。ただ会話が続くとリズム感が不自然になる。台詞と地の文をうまくないまぜにするために、何かものを食べさせたり、タバコを吸わせたりするんです。でも今のご時世はタバコを吸う人が少なくなっているので、より共感を生みやすい食べるという動作を取り入れることが多いと思います。

おせんべいの食べ方に登場人物の心情が表れる!?

――小説のなかにおせんべいを食べるシーンを取り入れるとしたら、どんなシーンを描きますか?

谷津先生

谷津先生

おせんべいってごく日常的なおやつですよね。だから、家族と食べることも一人で食べることもありうる。それでいて、かなり特徴のある食べ物ですよね。噛むとバリボリ音がしますから。会話をしながら食べるという描写はもしかしたら難しいかもしれない。でも沈黙を描きたいときにはいいですね。
坂井先生

坂井先生

初対面とか間がもたない相手との描写とかに使えそうですね。あとおせんべいは食べ方によって性格やそのときの気持ちの描写ができるかもしれませんね。例えば普段はおせんべいを手で割ってから食べるおしとやかな人が、がぶりと豪快に噛んで食べかすをバラバラ落とすとなると、何かとてもイライラしているような描写になると思うんです。
谷津先生

谷津先生

逆にすごくリラックスしているシーンもおせんべいにかぶりつくことで描写できると思います。上品に振る舞うために人前ではおせんべいを割って食べている人が、誰もいないところでは思いっきりかぶりつくとか。
坂井先生

坂井先生

確かに!面白いですね。まだ小説のなかで登場人物におせんべいを食べさせたことはあまりないのですが、そのうちやってみようと思います。

悪巧みのお供にはおせんべい!?

坂井先生

坂井先生

私の小説は女性の読者が多いので、おやつは甘いものを食べさせることが多かったんですよ。甘いものが好きな方が多いイメージがあって。

――なるほど、読者像をイメージしながら執筆されているのですね。

坂井先生

坂井先生

全然、そんなことないです。何も考えていないですよ。
谷津先生

谷津先生

計算しないであれだけ人気の出るものを書いているなんて、恐ろしい話ですよ。

――執筆中は内側からどんどんインスピレーションが湧いてくるのですか?

坂井先生

坂井先生

そうだったらいいんですけどね。煮詰まってしまうときもあります。
谷津先生

谷津先生

中国の古い格言で、アイデアが出てこないときは馬上、枕上、厠上が良いっていいますよね。外に出て旅をしたり、寝てみたり、またはトイレに籠もってみたりするといいと。リラックスをすることで、思い浮かぶものがあるということみたいです。そういう意味では、おやつを食べるということもアイデアを練るときにはいいのかもしれない。ああ、僕は、自分が考えごとをするときに「田舎のおかき」を食べているなぁ。ガリガリしていて刺激を受けるんですよね。
坂井先生

坂井先生

確かに、ぽりぽりとおせんべいを食べているときってちょっと斜め上を見て何か考えごとをしているかも。
谷津先生

谷津先生

噛むことによって脳が刺激されるのかもしれませんね。これまであまり意識はしていませんでしたが。おせんべいって咀嚼音が大きいから、ほどよく外部環境と遮断されるのかもしれません。
あっ、もしかしたら小悪党が悪巧みをしているときに食べているおやつはおせんべいかもしれません。人間、悪事を考えているときほどよく頭を働かせるんですよ。どうやって検問を突破しようか、どうやって盗みを働こうかを考えさせるときにおせんべいを食べさせるとか……。意外と能動的に頭を使うのって悪人なんです。

岩塚製菓は山椒使い、豆使いが上手!

――さきほど「大袖振豆もち」や「THEひとつまみ えびカリ」、「田舎のおかき」などを好んで召し上がっているという話がありましたが、その他にも好んで召し上がっているおせんべいはありますか?

坂井先生

坂井先生

「バンザイ山椒」も大好きです。岩塚製菓は山椒の使い方が本当に上手ですよね。山椒は江戸時代から使われている香辛料なので、小説を書くときの参考になります
谷津先生

谷津先生

わかります。山椒ってこんなに美味しいんだ!って気づかせてくれました。お米と本当によく合いますよね。
坂井先生

坂井先生

「岩塚の黒豆せんべい」も大好きですね。美味しいだけでなく、タンパク質の補給もできるのがいいんですよ。タンパク質が不足すると頭が働かないので、日頃から一生懸命豆乳を飲んだりしています。「岩塚の黒豆せんべい」は美味しくタンパク質補給ができていいですよね。
谷津先生

谷津先生

黒豆が美味しいですよね。僕は30代半ばになってようやく豆の美味しさに気がついたんですよ。それまでは節分の豆も義務的に食べていた感じだったのですが、あるとき「豆、うまいな!」って気がついて。しかもお米とよく合うことが改めて発見になりました。これもやっぱり食感がいいので、考えごとをしているときに食べていますね。
そういえば、「岩塚の黒豆せんべい」って、塩味ってことになっていますけど、塩以外の美味しさも感じません?なんだろう?

――「岩塚の黒豆せんべい」は、塩を溶かした調味油で味をつけているんです。これにより、口溶けや喉越しを良くしています。

坂井先生

坂井先生

なるほど!

岩塚製菓と小説家の共通点

――お二人には長年「大人のぽりぽりクラブ」のアンバサダーを務めていただいていますが、岩塚製菓の好きなところを改めてお聞かせいただけますか?

坂井先生

坂井先生

お米の味が美味しいところですね。しっかり素材の旨味を感じられるところが好きです。あとは素朴な原材料を使いつつも、挑戦的な商品も出しているところ。面白い新商品が出てくるのをいつも楽しみにしています。
谷津先生

谷津先生

僕はフレーバーに対する並々ならぬこだわりを感じるところが好きですね。常に本場の味、本物の味を狙ってくるじゃないですか。だからこそ、山椒味も本格的な味わいで美味しいんだと思います。「THEひとつまみ えびカリ」のカレー味なんか「そこまでやるか」って思うほど本格的ですよね。その姿勢が信用できると感じています。
フレーバーって実は小説を書くうえでもすごく大切で。特に僕たちは江戸時代を書いている小説家なので、その時代の匂いを感じさせることってすごく重要なんですよ。「こういう話なんですよ」って説明するよりも、そう感じてもらえるよう匂わせることが大事。フレーバーへのこだわりは、岩塚製菓と小説家に通じるものがあるなと感じています。

――ありがとうございます。最後に、おせんべいと時代小説を嗜む粋な読者の皆さんにメッセージをお願いします。

谷津先生

谷津先生

時代小説とおせんべいってとても相性がいいと思うんです。どちらもお米と醤油の文化の上に成り立っているものですから。なのでぜひ、組み合わせて手軽なマリアージュを楽しんでいただきたいと思います。
坂井先生

坂井先生

そうですね、私もおせんべいと時代小説はとてもよく合うと思います。読み疲れたらバリバリとおせんべいを食べて、リズムを生み出してみてほしいです。あとは、現代を生きる方はお疲れの方も多いので、本を読んでいると眠たくなってしまうことがあるかもしれません。そんなときは、おせんべいを噛み砕いて覚醒していただければと思います!

――ありがとうございました!

坂井希久子先生の新刊

『桜ちらし 花暦 居酒屋ぜんや』

『桜ちらし 花暦 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫 さ 19-20)

シリーズ通算18冊目、「花暦居酒屋ぜんや」シリーズの最新刊。長年美味しい料理で人々を虜にしてきたお妙がついに出産!? ほっこり優しい気持ちを味わいながらほろりとできます。

谷津矢車先生の新刊

憧れ写楽

『憧れ写楽』(文藝春秋) (ハルキ文庫 さ 19-20)

蔦屋重三郎と共通する世界で活躍する、東洲斎写楽のミステリー。数多くの傑作を残しながらも姿を消した写楽は、その後の研究で正体が明らかになったと言われていますが、果たして…!? 蔦屋重三郎が「隠した」人物の謎をと明かしていきます。

取材協力

坂井希久子先生
©︎大泉美佳

坂井希久子

和歌山県生まれ。2008年「虫のいどころ」でオール讀物新人賞を受賞し、デビュー。17年『ほかほかご飯 居酒屋ぜんや』で髙田郁賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。23年『華ざかりの三重奏』で文芸エクラ大賞受賞。 著書に『泣いたらアカンで通天閣』『ヒーローインタビュー』『妻の終活』『たそがれ大食堂』などがあり、「居酒屋ぜんや」シリーズ、「江戸彩り見立て帖」シリーズといった時代物シリーズも手掛ける。

取材協力

谷津矢車先生
写真提供:文藝春秋

谷津矢車

一九八六年東京都生まれ。駒澤大学文学部歴史学科考古学専攻卒。二〇一二年「蒲生の記」で第一八回歴史群像大賞優秀賞受賞。一三年『洛中洛外画狂伝 狩野永徳』でデビュー。二作目の『蔦屋』では、「この時代小説がすごい!2015年版」にて第七位。その他の著作に『曽呂利』『おもちゃ絵芳藤』(第七回歴史時代作家クラブ賞作品賞)『二月二十六日のサクリファイス』『憧れ写楽』などがある。